学修成果可視化ツールの選び方|比較の5観点、導入した大学の進め方、選定前にやること
ハーモニープラスが、学修成果可視化システムの選び方を整理します。製品ページを見比べると、DP達成度の表示、ポートフォリオ、ダッシュボード、外部テストの取り込みといった機能はどの製品にも一通りあり、機能の有無だけでは比べにくいものです。本記事では、データ接続・指標の柔軟性・学生と教員の使いやすさ・運用負荷・費用の5観点と、認証評価・学生支援・教育改善という目的ごとの重みづけ、そして導入した4大学がどんなきっかけと体制で何から始めたかを、順に見ていきます。
1. 学修成果可視化システムでできることの範囲
学修成果可視化システムは、大学が定めた学修成果を、データで確認できる形にする仕組みです。製品によって差はありますが、一般に次の4つが中心になります。
- DPに対応した指標設計:ディプロマ・ポリシー(DP)を、測れる単位に分けて整理します。
- データの取り込み:教務システム、LMS、アンケートなどのデータを集めます。
- 学生の振り返りの記録:学生自身が学びを言葉にして残します。
- 教職員向けのダッシュボード:集計結果を、会議や面談で使える形で見せます。
製品ページを横断して見ると、このほかに「科目とDPの対応(カリキュラムマップ)の管理」「外部のアセスメントテストや英語試験の結果の取り込み」「DPごとの到達度をレーダーチャートで表示」「学生の目標設定・振り返りへの教員コメント」「卒業時のディプロマ・サプリメント出力」が、よく挙げられる機能です。すべてを使う必要はなく、自学で最初に使う場面に必要なものから確認します。
大学が独自の名称で運用している例も多く、法政大学は2023年3月末から「Halo」という名称で学修成果可視化システムの運用を始めています(法政大学の発表)。文部科学省も2026年3月に「教学マネジメント取組事例集」を公表し、データに基づく学修成果の可視化を、教職協働の全学的な体制のもとで進めている大学のヒアリング結果をまとめています(文部科学省 教学マネジメント取組事例集)。システムは、その体制の中で使う道具という位置づけです。
成績だけでは見えにくい部分を、複数のデータで補うという位置づけです。可視化の方法や指標設計の手順そのものは、別の記事で扱います。
2. 比較の5観点
製品名で比べる前に、観点をそろえます。次の表を、候補を見るときの質問リストとしてお使いください。
| 観点 | 確認する質問 | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| データ接続 | 教務システム、LMS、アンケートのデータを、どの形式で取り込めますか。 | 取り込みの頻度と、データ整形を誰が担うか。 |
| 指標の柔軟性 | 学部ごとのDPや、将来の見直しに合わせて指標を変えられますか。 | 変更のたびに事業者への依頼が必要になるか。 |
| 学生と教員の使いやすさ | 学生は無理なく振り返りを入力できますか。教員は短時間で結果を確認できますか。 | 入力が負担になり、記録が続かないこと。 |
| 運用負荷 | 初期設定、問い合わせ対応、年度更新は誰が行いますか。 | 導入後の担当者の異動と、手順の属人化。 |
| 費用 | 初期費用、継続費用、追加開発費用は、それぞれ何を含みますか。 | 連携や帳票の追加にかかる費用が、見積もりに入っていないこと。 |
3. 自学の目的別の重みづけ
同じ5観点でも、目的によって重みは変わります。次の表は目安です。学内の状況に合わせて調整してください。
| 観点 | 認証評価向け | 学生支援向け | 教育改善向け |
|---|---|---|---|
| データ接続 | 高い | 中 | 高い |
| 指標の柔軟性 | 高い | 中 | 高い |
| 学生と教員の使いやすさ | 中 | 高い | 高い |
| 運用負荷 | 中 | 高い | 中 |
| 費用 | 中 | 中 | 中 |
重みづけで見落とされやすいのが「使いやすさ」と「運用負荷」です。次の章で見る4大学は、いずれも説明会やFDを繰り返す、入力状況を学内で共有するなど、導入後の定着に多くの手間をかけています。使いたい気持ちはあっても、運用の設計が無ければ定着しにくい、ということです。
認証評価向けでは、DPと評価データの対応を説明できることが重要です。学生支援向けでは、学生が続けて使えるかどうかが成否を分けます。教育改善向けでは、教員が会議で使えるデータになっているかが鍵です。費用は、どの目的でも継続費用まで含めて見ます。
4. 導入した大学の進め方
ハーモニープラスが公開している事例から、進め方が分かる4大学を取り上げます。いずれも学修成果MOEを使っていますが、きっかけも体制も最初に始めた範囲も違います。先に全体を表で比べ、そのあと各大学の進め方を見ていきます。
| 大学 | きっかけ | 体制 | 最初に決めたこと | 定着の工夫 |
|---|---|---|---|---|
| 法政大学 | コロナ禍で「大学として何ができていて何ができていないかを説明できるか」という問い | 教育開発支援機構が主導し、教育支援担当理事のもとにワーキンググループ | 15学部それぞれのDPを「大学全体のDP」として束ねる設計 | 「管理のための道具にしない」「学修の鏡」として位置づける |
| 東洋大学 | 自己点検・評価に必要なデータが全学で揃っていなかった(2017年) | 学長方針のもと副学長を中心にワーキンググループ、各教授会にも説明 | GPAを基軸にする妥当性、DPとの対応、数値化できない成果の扱い | 全学共通の枠組みと学部独自の指標を両立させる運用設計 |
| 大同大学 | 成績やGPAでは学生一人ひとりの成長を捉えられない | 教学・情報・事務が関わるワーキンググループ、副学長が主導 | 成績データや学内システムとの接続を導入前に確認 | FDや説明会を何回も実施、入力状況を学科ごとに共有 |
| 南山大学 | DPに定めた学修目標の達成状況を可視化し、学生の振り返りと教職員の支援に使う | 教職員向けの利用者説明会(2026年8月) | 機能を全部覚えるのではなく「この場面なら使えそう」を各自が見つける | 面談・授業・学科会議の3場面から小さく始める |
法政大学:15学部のDPを束ね、「学修の鏡」として使う
きっかけは2020年のコロナ禍でした。こうした問題意識から、自大学の教育の状況をエビデンスベースで把握し、全学的に点検・説明できる基盤が必要だと考えるようになり、検討を始めています。各学部はそれぞれに異なる教育文化を持っており、当初は「なぜ共通化が必要なのか」との難色もありました。拙速に結論を出さず対話を重ね、各学部のDPを大学全体のDPとして束ねる設計にしたことで、多様性を保ちながら全体を俯瞰できる形になっています。導入後は、学部執行部による成績不振学生の早期発見や入試経路別の分析が自動化され、職員の手作業の集計が減り、感覚に頼っていた教学の議論が具体的なデータに基づく議論に変わりました。学内では「Halo」の名称で運用されています。詳しくは法政大学の事例をご覧ください。
東洋大学:全学共通の枠組みと学部独自の指標を両立させる
14学部・50以上の専攻を持つ大規模大学で、2017年当時は自己点検・評価に必要なデータが全学で揃っておらず、学修成果を議論する基盤がありませんでした。2021年度の認証評価を控えていましたが、制度対応にとどめず、教育改善と質保証の仕組みをどう整えるかという中長期の視点で検討しています。学長の方針のもと副学長を中心にワーキンググループを置き、「文系の学びを数値化できるのか」という率直な意見も取り入れながら、GPAを基軸にする妥当性、DPとの対応、数値化できない成果の扱いを一つずつ決めました。導入後は、学生の成績や成果をもとにカリキュラムを検証する文化が芽生え、教員側から議論が広がって教育改善のサイクルが回り始めています。詳しくは東洋大学の事例をご覧ください。
大同大学:導入前に成立性を見極め、説明会を何回も重ねる
出発点は「成績やGPAでは学生一人ひとりの成長を捉えられない」「学生自身が何を学び何を身につけたかを説明できる状態をつくりたい」という問題意識です。教学・情報・事務が関わるワーキンググループを置き、導入前に成績データや学内システムとの接続を確認して、成立するかどうかを慎重に見極めています。当初は別のシステムが有力候補でしたが、大学側の負担が大きいことから、大学の体制とリソースを前提に設計され、導入後の活用まで一緒に考えられることを決め手に学修成果MOEを選んでいます。教職員への理解を得るため、入力状況などの事実を共有しながら、FDや説明の場を何回も設けて、理解を深める取り組みを行っています。2023年の導入後は、アルバイトや課外活動、将来への不安など、これまで表に出てこなかったことが学生の振り返りに書かれるようになり、教職員はその記録を踏まえて学生と話せるようになっています。詳しくは大同大学の事例をご覧ください。
南山大学:面談・授業・学科会議の3場面から小さく始める
南山大学は2026年8月に、学修成果可視化システム「ITER」(学修成果MOEを活用)の教職員向け説明会を開きました。説明会の方針は、全機能を覚えることではなく「この場面なら使えそうだ」と思える使い方を各自が見つけることです。具体的には、面談の前に成績・学修目標・振り返り・活動記録を確認して対話につなげる、担当授業の履修者数や成績傾向を年度ごとに見て次年度の改善策を考える、学科会議で同じデータを見てDP項目ごとの達成状況の共通認識をつくる、の3場面です。説明会後のアンケートでは78.3%が「使ってみたい」と答え、関心が高い活用場面として「面談前に学生カルテを確認する」が挙がりました。詳しくは南山大学の紹介記事をご覧ください。
4大学に共通する進め方
- システムの導入そのものより先に、「何をデータで確かめたいか」を決めている。
- 特定の部署に任せず、教学・情報・事務が関わる体制(ワーキンググループや説明会)を置いている。
- 全学一斉ではなく、使う場面や範囲を限定して始め、定着してから広げている。
- 比較の5観点で言えば、「学生と教員の使いやすさ」と「運用負荷」を、導入後の定着の条件として重く見ている。
5. 選定の前にやること
システムを選ぶ前に、次の3ステップを試してみてください。
- 対応表をつくる:DP、到達目標、評価データを一枚の表に並べます。まずは1学部、1つのDPからで十分です。
- データの所在を確認する:どのデータが、どの部署の、どのシステムにあるかを書き出します。教務システムが扱う範囲と、学修成果の可視化で必要な範囲は異なります。違いは「学務システムとは?」もご参照ください。
- 空白を見つける:対応表のうち、評価データが無い箇所に印を付けます。その空白が、システムに求める機能の出発点になります。
この表があると、各候補に対して同じ質問ができ、比較が進めやすくなります。なお、学内の個人情報や機微情報は、学外に持ち出さない前提で扱うことが大切です。
6. まとめ
学修成果可視化システムは、製品の優劣ではなく、データ接続・指標の柔軟性・使いやすさ・運用負荷・費用の5観点を、自学の目的に合わせて重みづけして比べます。そのためにも、先にDP、到達目標、評価データの対応表をつくっておくことをおすすめします。
ハーモニープラスの学修成果MOEは、DPと評価データの対応づけ、教務システムやLMSからのデータ取り込み、学生の振り返りの記録、教職員向けの集計までを一つの基盤で支える学修分析プラットフォームです。5観点のうち「データ接続」と「指標の柔軟性」は、対応表があると具体的に相談しやすくなります。業務の整理や対応表づくりの段階からのご相談にも対応しています。
会社概要
会社名 : ハーモニープラス株式会社
設立 : 2010年1月
代表取締役: 降旗 真寿幸
所在地 : 東京都千代田区二番町7番地5 二番町平和ビル
事業内容 : EdTechソリューション事業、BPaaS事業
URL : https://www.harmony-plus.co.jp/
本件に関するお問い合わせ
ハーモニープラス株式会社 営業統括部門 マーケティングチーム
問い合わせフォーム:https://www.harmony-plus.co.jp/contact/