newslist

ニュース・ブログ

  • お知らせ

大学業務で生成AIを試す手順と利用ルール|入力情報の区分と確認体制

大学で生成AIの業務利用を検討する際、「どのAIツールを導入するか」から考え始めるケースがあります。しかし、ツールを導入するだけでは、大学業務の改善につながるとは限りません。まず確認したいのは、対象となる業務の手順が明確になっているか、入力する情報を区分できているか、利用時のルールと確認者を決められているかという点です。特に大学では、学生情報や成績、奨学金に関する情報、健康に関する情報、未公表の研究情報など、慎重な取扱いが必要な情報があります。生成AIの利便性だけでなく、情報管理や確認体制を含めて検討する必要があります。本記事では、大学の情報システム・DX推進・教務・学生支援部門の担当者に向けて、生成AIの業務利用を「対象業務の確認→作業手順の確認→入力情報の確認→限定試行→評価」の順に考える方法を解説します。特に、利用ルールと小規模な試行の方法を具体的に紹介します。


大学業務で生成AIを試す前に確認したいこと

生成AIの業務利用を検討する際は、最初から全学展開を目指す必要はありません。まずは現在の業務を確認し、どの作業を対象に試すのかを決めます。

対象となる業務を明確にする

最初に、「AIを使いたい」ではなく「どの業務の、どの作業を見直したいのか」を明確にします。

例えば、文書作成に時間がかかっているのか、問い合わせ対応が担当者に集中しているのか、複数部署で同じような転記作業が存在するのかによって、確認すべき点は異なります。

業務名だけではなく、作業の手順、担当者、使用しているシステム、入力情報、成果物まで分解すると、生成AIを試す工程と、先に手順を見直す工程を切り分けやすくなります。

生成AIを使わなくても改善できる業務を切り分ける

業務を確認すると、生成AIを導入する前に改善できることが見つかる場合があります。

同じデータを複数のシステムへ転記している、担当者ごとに処理手順が異なる、ファイルの保存場所が統一されていないといった状態では、生成AIを加えることで確認工程が増える可能性もあります。

まず作業手順と入力情報を確認し、そのうえで生成AIを試す工程を選ぶことが重要です。


大学業務で生成AIを試しやすい領域

生成AIは、判断そのものを任せるのではなく、人が確認することを前提とした補助業務から試すと、利用ルールや確認方法を設計しやすくなります。

学内文書や案内文の下書き

学内通知、説明資料、メールなどの文章をゼロから作成するのではなく、構成案や下書きの作成を補助させる使い方が考えられます。

ただし、生成された文章には誤りや不適切な表現が含まれる可能性があります。公開・送信前に担当者が内容を確認する工程を残すことが前提です。

公開情報の整理や要約

法令、制度資料、公開されている学内規程など、参照元が確認できる情報を整理する補助にも生成AIを利用できます。

一方で、生成AIの回答だけを根拠として業務上の判断を行うことは避け、必要に応じて原文や一次情報を確認します。

データ整理や分析作業の補助

表計算データの整理方法を検討したり、分析用コードの下書きを作成したりする用途も考えられます。

学生や教職員の個人情報などを扱う場合は、利用する生成AIサービスの契約条件、入力データの保存・利用条件、大学の情報セキュリティポリシーを事前に確認する必要があります。

また、生成されたコードをそのまま実行せず、処理内容や外部通信の有無などを確認したうえで利用します。


生成AIを業務に組み込む5つの手順

大学業務で生成AIを試す場合は、ツールを選定する前に、対象業務の手順と確認方法を整理しておくことが重要です。

  1. 対象業務を決める:担当者、作業内容、使用システム、成果物を確認し、試行する範囲を絞ります。
  2. 作業を分解する:入力、処理、確認、出力に分け、担当者ごとに異なる手順がないかを確認します。
  3. 入力情報と参照元を確認する:生成AIに入力する情報の区分と、回答を確認するときの一次情報を整理します。
  4. 限定した範囲で生成AIを試す:対象者と対象業務を絞り、人による確認を残した状態で試行します。
  5. 修正や確認の状況を記録する:作業時間だけでなく、修正回数、確認負荷、手戻りを記録し、継続利用の判断材料にします。

この順序で確認することで、「生成AIを導入したものの、既存の手順と合わず使われない」といった状態を避けやすくなります。

重要なのは、生成AIを導入すること自体を目的にしないことです。業務を整え、必要なデータが残り、そのデータをもとに改善が回る状態をつくることが、継続的な大学DXの基盤になります。

ハーモニープラスでは、生成AIの導入可否を先に決めるのではなく、業務を分解・標準化し、処理結果や確認内容を記録できる状態を整えたうえで、必要な工程に生成AIを組み込む考え方を重視しています。

人を足すだけ、ツールを入れるだけでは解決しにくい業務もある

繁忙期の業務負荷に対して、人員やツールを追加することが必要な場面もあります。

一方で、作業手順そのものが複雑な場合や、担当者ごとに処理方法が異なる場合は、人員やシステムを増やすだけでは課題が残ることがあります。

作業を分解して共通化できる手順を確認し、処理結果や確認内容を追える状態にすることで、特定の担当者だけに判断や手順が集中する状態を抑えやすくなります。


大学の生成AI利用ルールで確認したい4つのポイント

生成AIを組織的に利用する場合は、利用できるツールを決めるだけではなく、「何を入力できるか」「誰が確認するか」までルールとして整理することが重要です。

1.入力してよい情報を明確にする

まず、生成AIに入力する情報を区分します。例えば、次のように整理すると、利用可否を検討しやすくなります。

  • 公開情報:大学公式サイトで公開している情報、公開済みの規程、公的機関が公開している資料など。利用時は情報の最新性や参照元を確認します。
  • 学内限定情報:公開前の学内通知、内部向けFAQ、会議資料など。利用する生成AIの契約条件や学内ルールを確認し、大学が認めた範囲で扱います。
  • 個人情報や慎重な取扱いが必要な情報:学生・教職員の個人情報、成績、奨学金、健康に関する情報、未公表の研究情報など。大学が定める規程や承認手続、利用するサービスの契約条件を確認し、利用可否を確認できない状態では外部の生成AIサービスへ入力しません。

区分の名称や利用可否は大学ごとの規程や利用環境によって異なります。利用するサービスについて、入力データの保存、学習利用の有無、契約条件、学内規程を確認したうえでルールを定めます。

2.生成AIの出力を誰が確認するか決める

生成AIの回答には、事実と異なる内容や、用途に適さない表現が含まれる可能性があります。業務で利用する場合は、確認の役割を明確にします。

  • 起案者:生成AIへの入力内容、参照した情報、出力内容を確認します。
  • 確認者:事実関係、制度との整合、表現、対象者に適した内容かを確認します。
  • 公開者:最終版と公開・送信する範囲を確認したうえで、公開または送信します。

例えば学内通知の下書きに生成AIを利用する場合、起案者が下書きを作成し、確認者が日付・制度・対象者などを原文と照合します。そのうえで、公開者が最終的な通知内容と送信範囲を確認します。

3.教学面と職員業務のルールを整理する

学生の学修やレポート作成における生成AI利用と、職員が業務で生成AIを利用する場合では、想定するリスクや管理方法が異なります。

一つのルールですべてを扱うのではなく、教学、研究、事務業務など利用場面ごとに必要な事項を整理すると運用しやすくなります。

4.ルールを定期的に見直す

生成AIの機能やサービス条件は変化します。一度ガイドラインを作成して終わりにせず、利用状況、サービスの仕様や契約条件、学内規程の変更などを確認しながら見直します。

文部科学省も、大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて、それぞれの教育の実態や状況変化を踏まえ、指針等を主体的に見直すことの重要性を示しています。


大学業務で生成AIを小さく試す5つのステップ

最初から全学的な利用を想定するのではなく、対象業務と利用者を絞って試行すると、必要なルールや確認工程を検証しやすくなります。

  1. 試行の目的と対象業務を決める:例えば「案内文の下書き作成を補助する」など、何を確認する試行なのかを明確にします。
  2. 入力できる情報と入力しない情報を決める:公開情報、学内限定情報、個人情報などを区分し、試行で扱える範囲を定めます。
  3. 利用者と確認者を限定する:試行に参加する担当者と、生成結果を確認する担当者を決めます。
  4. 人による確認を残して試す:生成結果をそのまま利用せず、参照元や事実関係を確認してから業務で使用します。
  5. 結果を記録して次の対応を決める:作業時間、修正回数、確認負荷、手戻り、利用上の問題を記録し、継続、対象変更、手順見直しなどを判断します。

例えば、問い合わせ一次回答の文案作成を試す場合、公開済みのFAQや案内情報だけを参照情報として用い、個人ごとの相談内容や個人情報は入力しない形から始める方法があります。生成された文案は担当者が確認し、どの程度の修正が必要だったか、確認にどの程度の負荷があったかを記録します。

試行結果を残すことで、生成AIを継続利用するか、対象業務を変更するか、作業手順そのものを見直すかを判断しやすくなります。


大学業務で生成AIを試す前のチェックリスト

  • 試したい業務と対象となる作業が明確になっている
  • 入力、処理、確認、出力までの作業手順を把握している
  • 生成AIへ入力する情報の区分を確認している
  • 利用する生成AIサービスの契約条件、入力データの保存・利用条件、大学のルールへの適合状況を確認している
  • 入力してよい情報と入力しない情報を定めている
  • 起案者、確認者、公開者の役割を決めている
  • 試行結果と修正内容を記録する方法を決めている

すべての業務を一度に対象にする必要はありません。まず一つの業務について手順と入力情報を確認し、限定した範囲で試す方法が現実的です。


まとめ:生成AIの試行は、手順と入力情報の確認から

大学で生成AIを業務に利用する際に重要なのは、ツールを導入すること自体ではありません。

まず対象業務と作業手順を確認し、入力する情報の区分と出力の確認者を決めます。そのうえで対象を限定して試行し、修正回数や確認負荷を記録します。

試行結果を確認しながら、生成AIを継続して使う工程と、別の方法を選ぶ工程を判断することが、無理のない業務利用につながります。


大学の生成AI利用、業務整理、業務標準化、DX推進に関するご相談は、お問い合わせフォームから承ります。

参考情報

資料請求はこちら