内部質保証システムの構築ポイント|委員会体制・PDCA・データ整備の3要素
ここでは、内部質保証システムを構築する場面に絞って、体制・PDCA・データ整備の3要素から進め方を整理します。本記事でいう「システム」は、情報システムだけでなく、点検・評価と改善を継続するための組織や手順を含む仕組みを指します。
具体的な進め方として、まず現在の業務とデータの所在を整理し、点検結果を改善につなげ、その結果を確認できる状態をつくることを提案します。
この記事の要点
- 内部質保証は、大学が自らの教育研究活動などを継続的に点検・評価し、質の保証と改善・向上につなげる仕組みです。
- 本記事では、構築を「委員会体制」「PDCA(点検・評価と改善の流れ)」「データ整備」の3つの観点から整理します。
- 最初の一歩として、すでにあるデータの所在や作成・更新の手順を棚卸しする方法が考えられます。
- 参照する2018年の解説資料と、現在適用される認証評価基準は区別してください。受審する評価機関と受審年度に適用される最新の基準・手引きを確認する必要があります。
内部質保証とは何か(構築の前提)
ここでは制度の詳細ではなく、構築に必要な前提を確認します。
大学改革支援・学位授与機構の林隆之氏による「教育の内部質保証に関するガイドライン」の解説資料(2018年1月29日)では、大学自身が継続的に点検・評価を行い、質を保証し、改善・向上に取り組む考え方が示されています。
同資料は、自己評価書の作成やPDCAという言葉だけで内部質保証を捉えることに問いを投げかけています。本記事では、構築の目的を、日常の点検から改善の実施、その結果の確認までが継続する状態をつくることと捉えます。
内部質保証を確認する3つの視点
上記の2018年の解説資料では、当時の第三サイクルの評価基準案について、体制の明確化、手順の明確化、有効な機能という3つの視点が紹介されています。
本記事では、この整理を体制・PDCA・データ整備を検討するための参考として用います。第4期を含む現在の認証評価基準を説明するものではありません。認証評価への対応では、受審する評価機関と受審年度に適用される基準・手引きを別途確認してください。
実務上は、組織や規程の整備に加えて、点検結果に基づく判断、改善の実施、結果の確認までを記録できるかという視点で、自校の運用を見直すことを提案します。
要素1:委員会体制を整える
委員会体制を検討する際は、点検・評価の対象と、判断や実施を担う組織を整理します。本記事では、次の項目を確認することを提案します。
- 何を対象に、どの単位で点検・評価するか。
- 全学、学部・研究科、学科などの各組織が、どの役割と責任を担うか。
- 点検結果を誰が確認し、改善や計画の見直しにつなげるか。
- 学生、卒業生、外部関係者の意見をどのように収集し、検討に反映するか。
実施単位は、自校の組織構成や教育課程に合わせて検討してください。大学全体の状況を把握することに加え、必要に応じて教育課程ごとの課題を確認できるようにします。
委員会づくりで先に決めておきたいこと
- 全学の委員会と、学部・学科などの点検組織の役割分担。
- 改善方針を判断する組織、改善を実施する組織、実施結果を確認する組織。
- 事務局を担う部署と、教務・学生支援・企画・IRなどの関係部署との連携方法。
- 報告するデータと資料、提出時期、報告様式。
例えば、学生アンケートの結果を委員会に報告する場合は、集計担当だけでなく、結果を検討する組織、改善を実施する担当、次回の確認時期まで決めておくと、報告後の対応を具体化できます。
要素2:PDCAを「回る形」にする
点検・評価を継続するには、日常的な状況把握と、一定の期間を区切った総合的な検証を組み合わせる方法が考えられます。実施頻度や範囲は、自校の方針と適用される評価基準に合わせて設計してください。
- 定期的な状況把握:学生の学修状況、アンケート結果、支援の実施状況などを継続して確認し、変化や課題を把握します。
- 総合的な検証:複数年度のデータや関係者の意見を用いて、教育課程や取り組みの成果、改善の必要性を検討します。
本記事では、次の流れを運用設計の例として提案します。
- 点検する対象、目的、担当者、必要なデータを決める。
- データを収集・整理し、状況と課題を確認する。
- 関係する組織で結果を検討し、改善内容を決める。
- 改善の担当者、期限、確認方法を決めて実施する。
- 実施結果を確認し、次の点検や計画に反映する。
例えば、ディプロマ・ポリシーに定めた学修成果を点検する場合は、確認に用いるデータと判断方法を先に整理します。点検結果を踏まえて、授業、カリキュラム、学生へのフィードバックなど、どの取り組みを見直すかを検討します。
運用開始時は、目的に合う少数の指標から始める方法もあります。ただし、収集しやすいという理由だけで指標を選ばず、何を確認し、どの判断に使うのかを明確にしてください。
要素3:データ整備から始める
委員会や点検手順を設計する際には、必要なデータがどこにあり、誰が管理し、いつ更新されるかを合わせて整理します。特定の部署だけで完結させず、データを作成・管理する部署と、分析・活用する部署の役割を確認してください。
自校で試せる3ステップ
- 業務とデータの棚卸し:教務、学生支援、IRなどで、点検に必要なデータが「いつ・誰が・どの形式で」作られ、どこに保存されているかを書き出します。
- 定義と形式の整理:同じ名称でも集計対象や算出方法が異なっていないかを確認します。年度や部署をまたいで比較する項目は、定義、対象期間、形式を揃えます。
- 継続して更新する手順の整備:必要な指標について、提供元、更新時期、確認担当、保存先を決めます。手作業が多い箇所は、手順の見直しや情報システムの活用を検討します。
棚卸しでは、「データ名」「利用目的」「管理部署」「対象年度」「更新時期」「保存先」「利用上の制約」を一覧にすると、収集や更新に必要な調整事項を確認しやすくなります。
学生の成績や支援記録などを扱う際は、学内の情報管理規程に沿って、利用目的、アクセス権限、保存先、保存期間を整理してください。外部のクラウドサービスを利用する場合も、取り扱う情報とサービスの利用条件を確認し、学内で承認された方法で運用してください。
体制・PDCA・データ整備の対応
本記事で提案する3要素を、実務上の確認事項に対応させると次のようになります。
この表は運用を検討するための例であり、特定の認証評価機関が求める提出資料の一覧ではありません。受審時には、適用される基準・手引きに照らして必要な資料を確認してください。
まとめと次の一歩
内部質保証システムの構築は、委員会体制・PDCA・データ整備の3つの観点から検討できます。それぞれを関連づけ、点検結果に基づく改善と、その結果の確認までを継続できるように設計することが大切です。
次の一歩として、点検に必要なデータの所在、担当部署、更新時期、形式を一覧にしてみてください。そのうえで、委員会への報告、改善の判断、実施結果の確認までの流れを整理すると、自校で整備すべき事項を具体化できます。
参考文献
- 林隆之(大学改革支援・学位授与機構 研究開発部)「教育の内部質保証に関するガイドライン」解説資料、平成29年度人材育成セミナー・内部質保証ワークショップ(第2回)、2018年1月29日。資料を確認する(PDF)
参照資料は内部質保証の考え方を整理するために用いています。現在の認証評価への対応では、受審する評価機関と受審年度に適用される最新の基準・手引きを確認してください。